広井良典『人口減少社会のデザイン』を読んだ

 広井良典さんの本を読んだ。科学史、科学哲学を専攻していた方で、社会保障について言及や提言がある一方、なかなかこの分野に言及する人では少ない、死生観について章が割かれている点が面白かった。また年金制度についての提言も、これまで読んだ新書では破綻するしないみたいな話が多かった一方、再分配のために比例報酬部分の課税強化を言っていて面白いなと思った。以下、すごく雑なメモ。

AIの示す未来

  • 都市集中か、地方分散かでは、地方分散の方が地域の持続可能性、健康、格差、幸福の観点から望ましい結果になった。
  • 今から8〜10年後程度に都市集中型のシナリオと地方分散型のシナリオとの分岐が発生し、以降は両方のシナリオが再び交わることはない。
  • 持続可能な地方分散型シナリオの実現には20年後まで継続的な政策実行が必要。
  • 東京への一極集中か、地方分散か、の分岐がもっとも本質的な分岐、選択肢である。AIによる日本の未来についてのシミュレーション。
  • GNH グロス・ナショナル・ハピネス 国民総幸福量 スティグリッツやアマルティアセン。日本はかなり見劣りする。社会的サポートや多様性で低い。経済的豊かさを実現したが、何か傍に置いてきたのではないか?
  • これからの日本社会において「良き意味での個人主義」が重要なポイントになるのではないか。ある程度独立しつつ、集団を超えてゆるくつながる関係性。

農村型コミュニティと都市型コミュニティ

異質だが補完的。

農村型コミュニティ 都市型コミュニティ
共同体的な一体意識 個人ベースの公共意識
情緒的、非言語的 規範的、言語的
共同性コモン 公共性パブリック
結合型bonding 橋渡し型bridging
  • 日本人は農村型に傾斜しがち。ウチとソト、同調と排除に現れやすい。
  • 一層の少極集中に向かうか、多極集中に向かうのかの分岐点に立っている。多極集中は一極集中でも多極分散でもなく、地域の極は集約的で歩行者中心のコミュニティ空間。人口減少下では多極分散は密度が低すぎる。
  • リチャードフロリダ。人々の消費は情報から時間の消費へ。貨幣で評価しにくいニーズに関わる市場経済を超える領域が展開しようとしているのが現在なのではないか。

ポスト情報化、ポスト資本主義

情報化前期 情報化後期
集権化 分散化
巨大化 小規模化
手段的合理性instrumental 現在充足性consummatory
グローバル化 ローカル化
GAFA ブロックチェーン、分散型エネルギーシステム
物質エネルギーから情報へ 情報から生命、エコロジー
  • 資本主義と市場経済は異なるものだ。
  • 規範や倫理はその時代の経済状況に依存して生成する。私利の追求を肯定的に捉えることと経済全体のパイが拡大していくことは、表裏の関係にある。

新たな時代状況

  1. ソーシャルブレイン社会脳論、ミラーニューロンなど脳研究
  2. 健康の社会的決定要因についての学問、社会疫学の台頭
  3. ソーシャルキャピタル
  4. 利他的行動や協調行動に関する進化生物学的研究
  5. 行動経済学、神経経済学
  6. 幸福研究
  • ウィルキンソンやガザニガ、パットナム。こういう研究が一気に湧き起こっている。ポスト資本主義。
  • 機械への意識の移植、機械の中での第二の人生、シンギュラリティなどは、新しいように見えて、実は近代社会のパラダイム、利潤の最大化と、自然の支配という世界観の極限に過ぎない。

これからの社会保障

  • 高齢者の基礎年金の拡充、若者向けBI、農業版BI、地域おこし協力隊のような地方版BI、若者基礎年金。
  • 人生前半の社会保障とストックに関する社会保障
  • 相続税、資産税の課税強化と年金の比例報酬部分への課税強化
  • 年金の二階部分は比例報酬であることから高所得層ほど現役世代から多くの移転を受ける。これは逆心的だとする。また、日本の所得と資産をめぐる格差は収入より住宅、土地、貯蓄の方が大きい。
  • ストックの分配、所有のあり方が課題。これはピケティと同じ。
  • 年金については、本当に必要な層に十分な年金が支給されておらず、必要性が相対的に薄い層に過剰とも言える年金が支給されている、とする。基礎年金が役割を果たしていない。

予防的社会保障

社会保障の財源

  • 消費税 20%以上への引き上げが必要
  • 社会保障の規模の大きくなった高齢化社会、成熟社会においては、税の累進性による再分配から社会保障給付による再分配へ、という構造変化が見られる。社会保障関連費の増加により、集める段階より使う段階での再分配効果が大きくなっている。
  • 相続税
  • 環境税を含む資産課税

複雑系としての病。進化医学、持続可能な医療。

死生観の再構築

  • 高度成長期以降の日本では、「死生観の空洞化」が進んできた。戦前への反省もあり、死を語ることが避けられてきた。
  • 地域密着人口:子供と高齢者の数。地域で暮らす時間の多いひとたち。
  • 死に場所の選択の拡大と多様化。病院での看取りはピークから少し減った。それでもイギリス、デンマークに比べると多い。看取りや死生観の深い部分で満たされていないニーズがあるのではないか。
  • 直線としての人生のイメージ、円環としての人生のイメージ、魂の帰っていく場所。

3つの時間。

  • 日常の時間。

カレンダー的。直線としての時間。

  • 深層の時間。

ニュートン力学に対するアインシュタイン。それぞれに異なる固有の時間。直線に対する円環。生と死は非連続ではなく連続的なものと捉えられないか。

日本人の死生観

特質 死についての理解 生と死の関係
原・神道的な層 自然のスピリチュアリティ 常世根の国、具象性 生と死の連続性
仏教、キリスト教的な層 現世否定と解脱、救済 浄土。極楽、永遠の生、抽象化・理念 生と死の二極化
唯物論的な層 科学的、近代的な理解 死=無 生=有、死=無
  • 最も表層に唯物論的な層があり、次に宗教的な層、根底に自然のスピリチュアリティがある。もう一度根底にある伝統的な死生観を再発見する時代になっているのではないか。
  • リアルとバーチャルの境界が曖昧、連続性。生と死、有と無も。
  • 日本社会において、集団の空気しかよりどころがなく、集団や個人が自閉的になる根本的な原因になっている。集団を越える価値原理を取り戻すことが個別のコミュニティや集団を開き、繋いでいく通路になるのではないか。