大塚篤司『最新医学で一番正しいアトピーの治し方』を読んだ

世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方

世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方

読んだ。間違ったことは書いていないと思うし、二重抗原曝露仮説の解説もあった。デュピクセントの注射や今年以降に認可の下りる新薬についての紹介もあって自分の知識が刷新されたのが良かった。アトピーの標準治療はステロイドを使うものだが、その治療もステロイド以後にパラダイムシフトしようとしている流れ(でいいのか?)がよくわかった。

この本は、お医者さんとの関係で「言われたことをやっても治らなかった」「こんな民間療法をやってみたけど全然だめだった」等、経験則にもならないくらい混乱して苦しい思いをしているアトピー患者に響く内容になっていると思う。エビデンスに基づいていると書かれているけれど、ある程度経験のあるアトピー患者であればその内容のほとんどは知っていると思う。本当に混乱してしまって、例えば「アルカリイオン水がいいと言われたから12リットル買った」みたいなことをしている人たちは、この本を軸にアトピーについての本を5〜6冊読むと良いんじゃないかと思う。僕の感覚では、驚くほどに10年前15年前から民間療法の言説は変わっていない。

ステロイドは悪魔の薬、とはおそらくニュースステーション久米宏が言ったのだろう。私も母の影響が強く半分は民間療法的なことをやっているし、アトピーに関しては医者を信用しているかと問われたら、半ば信用していないから著者の気持ちには(申し訳ないけど)共感できた。知識レベルではステロイドは塗る部位によって吸収率が違う、顔には2週間以上塗ってはいけない、肌が薄くなる、衣類は綿100、熱すぎるお風呂はダメ等々、私からしたら常識的なものも多かった。新薬の話は新しいものだったので勉強になった。


しかしながら、ここに書かれているようなプロアクティブ療法(良くなってからもステロイドを定期的に塗り続ける)ことへの心理的抵抗が強い人は多いと思う。「そんなに長期間塗ってたら良くなって当たり前だ」と思う人が多いだろうと思う。リバウンド勢にしてみれば当然の反論である気もする。僕もいまだにそう思ってしまうし、どうしても掃除や食生活、睡眠、運動などの習慣を見直す事で「身体の内側から良くする」という考えの方が納得感が高いと感じてしまう。『油をやめたら〜』みたいなタイトルの本もあるけど、そりゃ油っぽい食事やマクドナルドのフライドポテト、ファミチキ、スーパーの油ギトギトのメンチカツみたいな生活をしていたら良くなるはずがないと思ってしまうのは僕が民間療法に毒されているからだろうか?
胡麻油、菜種油、油にも種類があるし砂糖にも種類がある。スーパーのフライものは油抜きをしてから食べるなんて僕の中では常識だ。
ともかく、そういう食生活を含む生活習慣抜きにプロアクティブ療法をして良くなるのか、みたいなことは当然思う人がいるだろうと思った。食物アレルギーとアトピー性皮膚炎が僕の場合はセットだから、そのあたりは他の読者とは違う部分もあるのかもしれない。

こう感じてしまうのは、これまで何人もの皮膚科医と会い、何人もの人からそれぞれ違うことを言われ、違う治療を試されてきた、つまり医者に裏切られてきたという気持ちが根底にあるからだろう。僕は何回も入院をして、アレルゲン除去食の治療も受けた。幼い頃、毎日少しのバナナやヨーグルト(だったか?)しか食べれず、ようやく太刀魚が少しだけ食べれるようになった、みたいな記憶がある。ある医者には「リングテスト」という大豆を右手に持って左手に輪っかを作ってその力を試すこともされたし、水虫の薬を出されたこともある。そんなこんなで、僕は自分の経験則からステロイドは極力使わず、医者にはプロペトとヒルドイド、食物アレルギー薬としてインタールを貰うだけ、という外来の使い方をしてお医者さんとは付き合っている。顔や吸収の良い部位に塗るためにアズノール軟膏を下さいと言うこともある。内服のステロイドは効きが良すぎるので使わない。

同じような人もいるんだろうと思う。自身の良くなった成功体験があるから、悪くなったときにはおなじような生活習慣を続ければ次第に良くなると考えてステロイドを使わない人たち。そういう人たちのうち、もっと偏屈な民間療法をしている人たちの手にとって貰えれば著者も嬉しいのではないか、と後書きを読みながら思ったのだった。