希島あいり『壁の向こう側NTR』の特異性

2019年末のAV作品の変化

ついに、という感じもするが、成人動画界隈にもリアル世界からの流入により作品に変化が起きている。端的に言えばTwitterカカオトーク等の匿名SNS利用が促進した文化がAV界に輸入されたと言える。VR作品の進化はまだ途上感もあるが、2019年のAV作品界の変化を上げるとすれば次のようになるだろう。

  • 1.作品内でのスマホでの個人撮影(ハメ撮り)シーンの増加
  • 2.作品内でオナ電シーンの普及

1.作品内でのスマホ撮影シーンの増加

1に関しては2019年より以前から存在し、いまではドキュメンタリータッチで描かれる作品には必ずと言って良いほど描かれ定番化している。
スマホの普及によってカップル間での個人撮影(ハメ撮り)がより一般的になってきたことと関連付けられるだろう。そのため、よりリアルに感じられる作品に仕上げるために使われている一方、リアリティを追求するとブレブレの主観アングルになってしまうという課題を残している。

2.作品内でのオナ電シーンの普及

2のオナ電シーンに関しては、希島あいりの『壁の向こう側NTR』(溜池ゴロー監督作品)での挿入シーンの影響が大きい。有名女優作品でオナ電シーンが挿入され、物語プロット上有効な(性的興奮に有効な)ものとして描かれた作品は本作品が初めてではないかと思われる。
壁の向こう側NTR

歴史を辿れば、チャットHやテレH、メールHというジャンルは古くから存在する。メディアが新しくなるごとに、人間の性的な営みも変化してきたが、今日でいう『オナ電』は一昔前では「テレH』と呼ばれていたものだ。それがTwitterの登場によって今日ではオナ電という言葉の方が広まったと言えるだろうか。LINEは本名登録している人たちが多い中で、今日ではカカオトークを使う者が多い。このオナ電というジャンルの認知を裏付ける作品として、この希島あいり主演の『壁の向こう側NTR』は決定的な作品だと考える。

この本作品でのシーンは、旦那に対する裏切り(背徳)感情をより高めるものとして設定されている。旦那の寝静まった夜半、がらんとした居間の椅子に座りスマホを耳に当てる希島あいりを引き気味にレンズをあてる構図。音声がなければ単なる自慰に耽っているだけであるかのようである。しかしながらそこに相手の男性の音声が挿入(それは電話口を通して我々が耳にする音声に似ている)されており、秘匿的な空間が演出されている。
鑑賞者男性は、希島にオナ指示している位置から鑑賞し、通常のオナ電では見えることのない相手の姿を(少し引きのアングルに巧妙にセッティングされた姿を)窃視しながら性的興奮を得ることに成功している。物語背景としてある背徳性のうえに成立するイケメン男優からのオナ指示という構図により、このシーンは作品内で見事にひとつの強度をもたらしている。本作品内のこのシーンに関して(いやこの作品は様々なフェティッシュが散りばめられそれ以外のシーンも素晴らしいのだが)2019年に発売された作品の中でも特筆されるべきだろう。