玉城絵美『BODYSHARING』を読んだ

 間違いなく今年読んだ本の中でNO.1。いま読むべき必読本だ。玉城さんはコロナ禍でHoloDを知ってから注目していた方。何度かWIREDでも名前を見かけたけど、本を読んでようやく角野隼人さんのピアノを綾瀬はるかが弾いていたNTTドコモ(?)のCMについても、使われていた器具は玉城さんの開発したものと関連のあるものだとわかった。あれは結構衝撃だった。こんなところで繋がっていたとは。本書に出会えて良かった。
 この本を読む前に広井良典さんの本を2冊読んでいて、考え方が対照的で面白い。広井さんは意識の移植や不老不死、シンギュラリティを目指すいまの潮流には批判的で、それらは近代の延長線上にあるに過ぎず、今求められているのは別様の道徳倫理、概念の創出だとしていた。近代的価値観の延長線上にある意識の移植などではなく、古来の死生観を掘り起こして円環的な生と時間が鍵になるのではないか、というニーチェ的な世界観を提示されていた。
 一方、本書の著者である玉城さんは体験のシェアを目指している。人間はどうなれば自分の身体であると感じるのか、という部分から人間身体に注目し、物理的な一つの身体に縛られない生を模索している。リアルとバーチャルが溶け合った先にある世界。SFのように聞こえるこの世界を本気でやっていやっしゃる。本書には氏が開発してきたデバイスがいくつか解説付きで載っている。どれも読むだけでワクワクするものだ。
 更に驚いたのは、氏の参照する文献が人文学系を含む多岐にわたるものであることだ。ユクスキュル、ドゥルーズフーコーアンドレ・グーラン、ジョナサン・ハスケル、ハラリ、東浩紀、そして國分・熊谷の『<責任>の生成』と中動態にも言及があった。科学の最先端にいながらもこれらの人物に言及があることに(自分の関心領域であることからも)とても嬉しく、信頼して読み進めることができた幸せな体験だった。
 とてもワクワクさせてくれる本であることは間違いない。かつ、先述の広井良典さんや、内田樹平田オリザ平川克美氏等の提唱している人口減少社会=ゆるやかに衰退していく日本はポスト資本主義社会において″衰退を受け入れ着陸を目指す″という方向性に対し、まったく異なる未来を創造できるはずだという異なるベクトルの期待感を感じさせてくれるものであるはずだ。広井さんの提唱する2050年とどのように矛盾するのか、と考えながら読んでいたが、ファンダメンタルな実社会の運営の部分と、それ以外を分けて考えることが出来れば、そうそう矛盾するものでもないのではないか、という感想を得た。玉城さんも本書の中でポスト資本主義に触れており、ハスケルを引きながら無形資産の資本主義について書かれている。問題意識は同じながらも、取り出して描かれる未来は別様だ。比較しながら読むのも面白いだろう。

以下、殴り書きメモ。

  • インターフェース、境界
  • HCI ヒューマンマシーンインターフェイス マンマシーンインターフェース
  • CUIGUI(ジョブズ)
  • VR, AR, XR
  • 言語、聴覚、視覚では現代は足らない。今求められているのは「固有感覚」の伝達である。
  • 視聴覚は受動的な感覚。押す叩く持つなど固有感覚は世界に作用するための感覚。深部感覚のこと。
  • 本来なら自分の身体を使って能動的に体験できたはずの出来事が、受動的であるがゆえに「自分が楽しい体験」ではなく「他人に羨ましさを感じる体験」になってしまう。
  • 能動的であるということは体験の重要な要素だ。世界に作用していくこと。
  • 我々は「移動」という概念を「身体」から解放し、認知科学的「意識」の移動をこそ考えるべき時に来ている。
  • 竜とそばかすの姫
  • 身体を自分のものだと感じる感覚。『身体主体感』『身体所有感』
  • アバターやロボットの身体に親しんだ後、本来生きる身体に戻った時、自身の身体を蔑ろにしてしまう可能性がある。マトリックスでのネオの転落、インセプションでの悲劇。
  • バーチャル世界で身体所有感が高まり過ぎるとリアルな身体に対する意識がかなり減退してしまう。
  • テレプレゼンスロボット、テレイグジスタンス、アバター、XR、人間拡張、どれも「操作する人をマスター、動かすロボットをスレイブ」とする一方向的なコミュニケーション手法、マスタースレイブシステム。フィードバックが重視されない。
  • 産業革命、資本主義の拡大、2000年代からモノより思い出、プライスレスを志向、無形資産に価値が認められるようになった。体験もそうだ。スレイブ側の体験の情報をフィードバックさせることは人にとって大切な経験になる。無形資産のコモンズとなる。
  • 閉回路理論。インプットとアウトプットを繰り返し修正していく。
  • センサとアクチュエータ。フィジカル空間の情報を変換し、サイバー空間に取り込む。コンピュータから電気信号を受け取り、物理的エネルギーに変換する。インプットとアウトプットの閉回路がぐるぐる回ることで人は満足を得られる。フィードバックループを回す。この閉回路学習のループをインタラクションという。
  • 今は人の情報入力の方法の方がpcの処理性能よりも遅く、pcスペックを使いこなすだけの情報入力を行うことができるかが問われる時代。
  • それぞれが生まれながらに固有のインターフェースを抱えている。同じものを持った時にどれくらいの重さを感じるかは人によって異なる。個人差の修正をキャリブレーションという。いま、キャリブレーションの時間の短縮を目指す研究がされている
  • これからはbodysharingと5g、xrが同時に活用され固有感覚以外の感覚の出入力を行うテクノロジーも発達し、統合される。インターフェースも変化する。
  • 物理的な固有の身体で特定の空間に行かなければならない制約から解放されていく
  • 人が作業した身体データをaiが分析してロボットに移植することで単純作業から解放される 
  • 人はインタラクションとしてフィードバックがあること自体を嬉しい、楽しいと感じる。そういう閉回路が備わっている
  • ジョナサン・ハスケル『無形資産が経済を支配する』
  • society5.0
  • 大企業の中で一人一人がイノベーション力を強化、アイデアスキル知的資本を日本全体が吸収できるようにすることが必要なのではないかと議論が変わってきた。個の解放。
  • 一人一人のアイデアや技術、知的資産を日本全体で吸収し、誰もが恩恵を得られるコモンズを作ろうとしてる
  • ポスト資本主義。society5.0。知的資本主義経済への移行が必須である。知的資本主義。知的財産によって資本主義を管理する。無形資産をメインとした資本主義経済。無形資産は物理的形態をとらない。
  • 研究成果をどのように実用化しビジネス化していくか。TRL(技術成熟度レベル)テクノロジーレディネスレベル+α

NASAのTRLは9段階までしかない。

10 一般市場の成熟、類似商品の横行
9 実際のフライトモデルが打ち上げられ、実際のフライトによって性能が確認されている 開発・ビジネス
8 実際のフライトモデルが製作され試験が完了している 開発・ビジネス
7 システムとして実証モデルが実際の使用環境に近い条件のもとで試験されている 応用研究
6 システムとして実証モデルが試験されている 応用研究
5 技術要素としての実証モデルが実際の使用環境に近い条件のもとで試験されている 応用研究・基礎研究
4 技術要素として実証モデルが実験室レベルで試験されている 応用研究・基礎研究
3 技術的な概念モデルが定量的に検討されている 基礎研究
2 技術的な概念モデルが提案されている 基礎研究
1 原理的な可能性が提示されている 基礎研究
  • 知覚身体存在拡張分野は2025年までに国内だけで1.03兆円規模に大きくなる
  • 脳のインターネットBMI。bodysharingと異なり、中枢神経における伝達も重視している。BMIも、HCI、人とコンピュータをインタラクションさせるものの一つ。
  • BMIには侵襲、非侵襲、非接触の3タイプがある。Apple Watchは非侵襲。
  • 脳については侵襲型の方が注目されている。イーロンマスクのneuralinkニューラリンク。
  • 侵襲型BMIは払う犠牲と享受できる恩恵のバランスが良いとは言えない。人工心臓と違ってそれがなければ生きられないわけではないから。社会的ニーズが必ずしも高いとは言えない。侵襲型BMIを人々が使いたいと思うようになるのはこれから数十年ではまだないのではないか。
  • 情報通信技術と集合知で社会が変わることは自然であり、その流れを止めることは誰にも出来ない
  • アンドレグーランの『身ぶりと身体』グーランはテクノロジーの進化が人を受動的なあり方へと進ませ知性が退化していくことを危惧している。
  • ペンフィールドホムンクルス。玉城さんが手と顔にまず注目する理由。情報の入出力し易い部位の中でも優先度が高い。
  • 3本目の腕、10体の体を動かせるようなインターフェースがないか研究している
  • 脳波でのタイピングは念力タイピングと言われ、全神経を集中させなければならず負担が大きい。リハビリと一緒。
  • 体性感覚を変化させることで脳がそれにどこまで適応できるかチャレンジする段階になっていると思う
  • 人は身体の機能を外化して進化してきた。新たな外化と解放の代わりに脳を鍛える方向を選択している。新たな外化の方向もあり、それが脳の外化である。
  • 脳からの解放。意思決定の重みからの解放。
  • マトリックスでのヘリコプター操縦方法、空手のスキルインストールが現実化する
  • 視聴覚情報のみならず、固有感覚で実感できる。良いスイング、ピアノ。簡単に動きを再現できる。
  • 我々は閉回路学習で脳内の新しいニューロンの結びつけ方を生み出してきた。情報網の緊密さを増大させてきた。
  • テヤドールドシャルダンは人類の進化は精神圏に移っていると言う
  • ロシアにもsociety5.0に似たニューロネットweb4.0というプロジェクトがあるが、こちらはBMIを中心に作られている。ニューラルテクノロジーを中心とした中枢神経を用いたもの。2030-2040に人動物人工知能のコミュニケーションを目指す
  • 1人の人が複数の身体パーツを操り、複数の身体を借りてマルチスレッドな生を送るホモムルタたくさんの人と言うべき存在を定義づけたい
  • bodysharingは生まれ持ったあるいは意図せず交点的に抱えることになった固有のインターフェースから人を解放する
  • 他者と同じインターフェースで同じ体験をしたら誰もか同じようにしか感じないだろう、というのが著者の考え方
  • さまざまなインターフェースに応じた体験をして1人の中にたくさんの個をもてばいいのだはないか。
  • 同一に共有される視聴覚情報がどちらのものなのかによって、どちらの身体と現実世界が主観体験になるかが決定することがわかっている
  • BMIは中枢神経を使って人をインターフェースから解放しようとしていて、bodysharingは末梢神経を使って人をインターフェースから解放しようとしている。脳を起点にするか、皮膚のすぐ下の末梢神経を起点にするかの違い。
  • society5.0もフーコーを参照している。
  • 私は自由意志は存在しないと考えているが、bodysharingを通じて個を保ったまま自由に主体的に生きる姿を構想している。
  • ニューラルネットワークや深層学習は自発的知性ではない。外界、フィジカルな世界とインタラクションを行うインターフェースがないから。閉回路学習ができない。人はインターフェースとしての身体を持つ。初期設定は遺伝情報、DNA。
  • コンピュータからすれば、インターフェースがあり初期設定の体験ログがあればフィジカル世界とインタラクションをはじめて体験を行うようになる。そのプロセスを通じて知性が生まれ、意識が宿るかもしれない
  • 自由意志は定義できていない
  • インターフェース、初期設定=体験ログ=DNA、体験=インタラクション、相互作用 の三要素が自発的知性を生み出す条件
  • シングルスレッドライフからマルチスレッドライフへ
  • 知性も好奇心も想像力も湧かなくなって決まった単純作業を行うようになった状態が滅びだ
  • 私はしばしば植物園に出かける。そこに「複雑性のカオスがたくさんある」からだ。理解、解明できていないことが多く存在する環境であり、こちらが作用すると何が返ってくるかわからない
  • 人間はアルゴリズムに過ぎないが、脳内物質だけで全てを説明することはできない。世界は人間だけが持つフィクション想像力によって変わってきた。ノアハラリ。

無題

 あまり元気がなかったが、オケの練習に行ったら元気が出た。やっぱり大切な場所だ。体調が優れず、みなとご飯に行けていないし、あまり気持ちの入った練習もできていないけれど、メンバーである以上は求められる水準までの準備はしなければ。
 寝不足なのか、あまり気持ちが上がらない。掃除、洗濯、料理、証券口座の手続き、仕事の勉強、図書館の本、楽器、なかなか進まない。5時には起きるようにしているが、その分寝る時間が早くなったかと言われると微妙なところで、早起きするためには、早く寝ないといけない。
 「〜ないといけない」のような思考も増えてしまってるかもしれない。アトピーも牛乳をやめて良くなったと思いきや、それ以降あまり変わらない。惣菜を買って帰って食べる日が続いているからかもしれないが、なかなか作ろうという気分にもなれていない。
 疲れているだけだろうか。
 これだけ肌の調子が悪いと、お酒を飲む機会を避けるようになる。アルコールはアトピーにとっては悪化する要因で、血行が良くなって痒みが出るし、そこで食べるものは油を使った料理が多く、自分でコントロールできない。それを伝えるコミュニケーションのコストもある。そんなこんなで、もう半年ほど積極的にはそういう場に行っていない。女の子とおでかけをしたり、デートもしていない。治さなきゃな、という気持ちだけで、休みの日は家の近くだけで過ごすことが増えた。家でも職場でも、肌の粉がよく落ちる。